今回紹介する『無職転生-異世界行ったら本気だす-』は、
「小説家になろう」というサイトで、2012年から連載されていたライトノベルです(完結済み)
「なろうの金字塔」とも呼ばれている非常に有名な作品で、
長期間「小説家になろう」のランキングで一位を取り続けていたこともあり、
ユーザーからの評価が非常に高い伝説的な作品です。
2021年現在、MFブックスより小説が発刊されており、
漫画、アニメも展開しているメディアミックスタイトルとなっています。
〇あらすじ
34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートは、ある日家を追い出され、
人生を後悔している間にトラックに轢かれて死んでしまう。
目覚めた時、彼は赤ん坊になっていた。どうやら異世界に転生したらしい。
彼は誓う、今度こそ本気だして後悔しない人生を送ると。
★無職転生の魅力
〇地に足ついたストーリー
あらすじだけ見ると、いわゆる「俺TUEEEEEE!」系のテンプレ転生小説と勘違いされそうですが、
無職転生はまったくそんなことはありません。
転生した主人公の名前はルーデウスというのですが、
このルーデウス、むしろ敵に負けまくります(笑)
物語の主軸はこのルーデウスの成長にあります。
主人公であるルーデウスは前世の知識がある分、多少頭は回りますが、
だからと言って転生後すべてがうまくいくわけではなく、
努力を重ねて成功したり、失敗して反省したり、そういったことを繰り返し少しずつ成長していきます。
なので唐突なご都合主義(と感じる部分)は少なく、
フィクションではありますがリアリティのある一人の人間の成長譚として見ることができます
また、この無力転生は、転生後赤ん坊の状態から始まり、主人公であるルーデウスの人生の終わりまで物語がつづられます。
そういった部分も没入感を高めてくれる要素になっていると思います。
転生系は主人公の強さばっかり焦点が当てられていて、後半につれて失速していくイメージがありましたが、
この無職転生に関してはそういった心配は無用でした。
ギャグとシリアスのバランスも絶妙で最初から最後まで安定して楽しむことができるストーリーになっています。
〇魅力的な登場人物
「無職転生」では主人公であるルーデウスをはじめ、
魅力的なキャラクターが数多く登場します。
父のパウロ、妹のノルン、アイシャといった家族をはじめ、
幼馴染のシルフィ、家庭教師のロキシー、お嬢様のエリスなど個性あふれる面々です。
すべての登場人物に共通する部分として、敵・味方問わず使い捨てされるようなキャラがほとんど存在しません。
味方が魅力的なキャラクターであることはもちろん、敵となるキャラクターもその人なりの信念があり、主人公の敵となっています。
たとえどんなに性格が歪んだキャラクターでも、そう至るまでの経緯が1人ずつしっかり書かれています。
敵キャラでも負けた時に悲しく感じてしまうほど、無職転生の登場人物達には魅力が詰まっています。
それぞれの人間関係が複雑に絡み合い、織りなされる重厚な物語は圧巻の一言!
作者の文章が読みやすいため、より感情移入しやすいのかもしれません。
〇濃密な人物描写、伏線の数々
無職転生の世界観はいわゆる剣と魔法のファンタジー世界ですが、
実際にストーリーや展開の軸となるのは、家族との衝突や友人関係でのすれ違いなど、
現実社会で生きる我々に共通する部分です。
実際に読んでいる人も苦悩したことがあるような場面がとても精緻に書かれているため、
まるで自分事のように感じてしまいます。
それでも主人公であるルーデウスを通し、
壁を一つひとつ乗り越え、成長していく姿が多くの読者の共感を呼んでいるのでしょう。
また序盤のうちから何気なく登場した単語やフレーズが、
後々重要な要素として物語に大きくかかわってくるので、
2週目、3週目と読み返していくたび、
「こんなところにも伏線があったのか!」と改めて驚くことも多々あります。
噛めば噛むほど味が出る作品といえるでしょう。
★無職転生の「ここがちょっと…」ポイント
●下ネタ・パロディネタが多め
世界観として女性が性の対象として強く描かれている側面があるので、
そういったものが苦手な方はあまりお勧めできません(特に幼年期の主人公の心理描写は転生直後ということもあってなかなかに変態チックです)
自分は少し気になる程度で読み進められましたが、そういったものが苦手な方は、何回か不快に感じると思われるかもしれません。
また、文章描写が一人称視点で、主人公の前世知識を絡めたギャグが多く登場します。
国民的アニメのパロディもありますが、サブカル的な結構古くてコアなネタも多いので、
アニメやゲームをあまり知らない方は「なんだこれ?」といった気持ちになったり、
ファンタジー世界とのギャップに少し白けてしまうかもしれません。
文章のテンポがいいので自分はあまり気になりませんでしたが、
そういったことが気になる方は要注意です。
●倫理観に疑問符が付く内容も
主人公のルーデウスは一般的な「なろう系」の主人公とはかけ離れています。
基本的には善良ですが、公明正大ではなくリアリストでの面が強く、
必要であれば悪事に近いことに手を染めたり、
自分の利益のために他人を利用することもあります。
性的な意味でもきわどい描写があり、
女性キャラクターにセクハラ(に近い)言動をすることが多いので、
いわゆる聖人君子のようなキャラクターでは全くなく、むしろゲスイといえるでしょう。
逆にそういった人間としてダメな部分があるからこそ、ルーデウスのキャラクター性は面白いとも言えますが、
人によって好みがかなり分かれる主人公だと思うので、
ひねくれた主人公が好きではない方にはあまりお勧めできません。
●回収されていない伏線・謎がある
無職転生には様々な伏線(または伏線と思われるもの)が数多く存在していますが、
そのすべてが物語内で回収されているというわけではありません。
あくまで無職転生は作者が展開している「六面世界の物語」という作品の一部であり、
その「六面世界の物語」はいまだ作者が描き切っていないので、
まだ解明されていない謎や伏線が多く残されています。
今後そういった謎や伏線は別の物語で補完されていくとのことですが、
ほかの作品の更新スピード的にも、
すべてが描かれるのはまだまだ先になる可能性が高いので、
気になってしまう方は作者の「六面世界の物語」がすべて完結してから読むことをお勧めします。
★祝!アニメ化!★
そしてこの無職転生ですが、
2021年1月よりアニメ化されています!
すでにご覧になった方もいるかと思いますが、
この無職転生のアニメ、キャラクターの作画や一つひとつの動きのアニメーションをはじめとして、
主題歌、BGMなどの音楽、背景美術に至るまで、全体的に非常に高いクオリティとなっています。
特筆すべきはオープニングアニメをカットし、本編内の描写の時間に充てていることです。
一般的なアニメでは通常みられないお金のかけ方をしていると言えますね。
それもそのはず、無職転生のアニメーション制作スタジオである「スタジオバインド」は、
この無職転生をアニメ化するために立ち上げたスタジオとのこと!
この作品にかける本気度が伝わってきますね!
この無職転生、作品自体は昔から存在しており、界隈では伝説的な作品でしたが、
スロースタートな展開からも「アニメ化に適していない」、「(たとえできたとしても)いい評価を得ることは難しいのではないか」と言われていました。
しかし、アニメのクオリティを見る限り、その心配は今のところ無用だといえるのではないでしょうか。
まだ視聴されていない方はぜひご覧ください!
いかがでしたでしょうか?
この作品は自分が小説家になろうにハマったきっかけでもある作品なので、個人的にもとても思い入れが深いです。
長い物語ですが、当時自分は時間を忘れて1週間ほど寝る時間も削りながら読み込みました(笑)
小説でもアニメでも、ぜひ一度見ていただければと思います。
ルーデウスと素敵なキャラクター達があなたを1週間、小説家になろうに拘束するでしょう!
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